| 藤竜也 ふじ たつや / Tatsuya Fuji | |
|---|---|
![]() 2024年7月、ニューヨークのMetrographで『愛のコリーダ』上映後に登壇(出典:ウィキメディア・コモンズ、CC BY-SA 2.0) | |
| 本名 | 伊藤龍也 |
| 誕生日 | 1941年8月27日 |
| 年齢 | 85歳 |
| 出身地 | 中国・北京生まれ、神奈川県横浜市育ち |
| 国籍 | 日本 |
| 学歴 | 関東学院中学校・高等学校卒業、日本大学芸術学部演劇学科中退 |
| ジャンル | 映画、テレビドラマ、歌手 |
| 活動期間 | 1962年 - |
| デビューアルバム | 1962年 映画『望郷の海』(日活) |
| 家族 | 妻:芦川いづみ(元女優) |
| 事務所 | 藤竜也エージェンシー |
| 代表作 | 『野良猫ロック』シリーズ、『時間ですよ』、『寺内貫太郎一家』、『愛のコリーダ』、『大追跡』、『村の写真集』、『龍三と七人の子分たち』、『高野豆腐店の春』、『大いなる不在』、『魯山人のかまど』 |
| 関連活動 | 歌手(1974年デビュー)、陶芸、エッセイ『現在進行形の男』 |
| あだ名 | ツモちゃん、タツ(石原裕次郎による呼び名) |
| その他 | 報知映画賞主演男優賞(1976年)、上海国際映画祭最優秀男優賞(2004年)、サン・セバスティアン国際映画祭最優秀主演俳優賞(シルバー・シェル賞、2023年)ほか |
概要[編集]
藤竜也(ふじ たつや、1941年8月27日 - )とは、北京生まれ・横浜育ちの日本の俳優である。日活のアクション映画でデビューし、大島渚監督の『愛のコリーダ』で国際的に知られる存在になった。ヒゲとダンディズムで一時代を築き、80代に入ってからも『大いなる不在』でサン・セバスティアン国際映画祭の最優秀主演俳優賞を受けるなど、今なお現役で進化し続ける名優だ。
詳細[編集]
北京で生まれ、横浜で育つ[編集]
藤竜也は1941年、当時日本の占領下にあった北京で生まれた。本名は伊藤龍也。父は北京滞在中に現地で召集され、戦死している。終戦後に一家は日本へ引き揚げたが、家族はばらばらになり、幼い龍也は逗子市の孤児院に入れられた。ところが本人はそこを3日で脱走したとされる。のちのアウトロー役の原点を思わせるような、なかなかハードな幼少期である。
その後は横浜で育ち、横浜市立戸部小学校、関東学院中学校・高等学校を経て日本大学芸術学部演劇学科に進んだ。横浜は藤にとって終生の「地元」で、後年の楽曲「ヨコハマ・ホンキー・トンク・ブルース」では自ら作詞も手がけている。
銀座でスカウト、日活へ[編集]
大学在学中、銀座を歩いていたところをスカウトされ、そのまま日活に入社した。1962年の『望郷の海』でスクリーンデビュー。当時の日活は石原裕次郎、小林旭らが看板を張る黄金期で、藤はまず脇役として経験を積んでいく。
若手時代の転機として本人がよく語るのが、鈴木清順監督とのやりとりだ。出演を売り込みに行った藤に対し、清順は「君には和田浩治のような育ちの良さも何もない」と言い放った。この言葉が逆に「自分は自分の色で勝負するしかない」と腹をくくるきっかけになり、俳優人生の転機だったと振り返っている。
1966年には石原裕次郎の代表作のリメイク『嵐を呼ぶ男』(主演は渡哲也)で主人公の弟・国分英次を演じ、存在感を示した。裕次郎からは「タツ」と呼ばれてかわいがられ、のちに結婚する際には裕次郎がタキシードを贈ったというエピソードも残っている。
日活ニューアクションと『野良猫ロック』[編集]
1960年代末、日活は従来の無国籍アクションから、若者の怒りや退廃を描く「日活ニューアクション」路線へと舵を切る。藤はこの流れのなかで頭角を現した。代表的なのが1970年から71年にかけて5本作られた『野良猫ロック』シリーズで、『女番長 野良猫ロック』の勝也、『ワイルド・ジャンボ』のガニ新、『セックス・ハンター』のバロン、『マシン・アニマル』のノボ、『暴走集団'71』のマッポと、全作に異なる役で出演した。
シリーズには梶芽衣子らが出演し、ロック、バイク、不良少女たちが入り乱れる独特の世界観で今もカルト的な人気を誇る。藤はこのほか『野獣を消せ』『広域暴力 流血の縄張』、渡哲也主演の『無頼 人斬り五郎』などにも出演し、ニヒルで危うい若者像を体現した。
しかし日活は経営難からロマンポルノ路線へ転換する。藤は1971年の『不良少女 魔子』を最後に日活を離れてフリーとなり、東映の任侠映画などにも活躍の場を広げた。1974年の『任侠花一輪』では初の単独主演を果たしている。
テレビで「静かにブレーク」[編集]
映画界が斜陽を迎えるなか、藤の名前を茶の間に広めたのはテレビだった。1973年、TBSテレビのホームドラマ『時間ですよ』で風間役を演じ、寡黙でかっこいい男として女性ファンの心をつかんだ。いわば「静かにブレーク」した形で、派手なヒーローではなく、ぼそっとしゃべる大人の色気で売れた点がいかにも藤竜也らしい。
翌1974年には同じく久世光彦演出のTBSドラマ『寺内貫太郎一家』に上条役で出演。樹木希林らと並ぶ濃いキャラクターたちの中で強い印象を残した。同年にはNHK大河ドラマ『勝海舟』で土方歳三を演じ、さらに歌手デビューまで果たすという大忙しの1年となった。デビュー曲は「花一輪/夢は夜ひらく」で、同年4月にはアルバム『藤竜也』も発売している。
経歴[編集]
『愛のコリーダ』とその後[編集]
1976年、藤は大島渚監督の日仏合作映画『愛のコリーダ』に主演する。昭和11年(1936年)の阿部定事件を題材に、料亭の主人・吉蔵と仲居の定(演:松田暎子)の関係を描いた作品で、同年2月のベルリン国際映画祭、5月のカンヌ国際映画祭で上映され、世界的な話題となった。
日本では大幅な修正を施して公開され、作品をめぐっては、脚本と宣伝用スチール写真を収めた書籍がわいせつ物頒布罪に問われ、大島監督と出版社社長が起訴される事態にもなった。裁判は一審・二審とも無罪となっている。藤自身は起訴されていない。
出演を決めた理由について藤は「ストーリーがピュアで良かった」と語り、もし断っていたら「一生、後悔しただろう」と述べている。この作品で第1回報知映画賞の主演男優賞を受賞した。大島とはカンヌにも同行しており、大島が大きな扇子を手に街を歩く姿に気迫を感じたという思い出を明かしている。1978年には大島監督の次作『愛の亡霊』にも主演した。
『大追跡』と刑事ドラマの時代[編集]
1978年、日本テレビ系のアクションドラマ『大追跡』に水原慎介役で主演し、テレビの第一線に戻った。共演は加山雄三、沖雅也、柴田恭兵ら。軽妙なやりとりと派手なアクションが売りの作品で、のちに『沖雅也と「大追跡」』という本が出た際には藤が題字を担当している。
以降は『プロハンター』(1981年、水原淳役)、『特命刑事ザ・コップ』(1985年)、『ベイシティ刑事』(1987年)などで、拳銃を手に車を追いかけるタフな中年刑事・探偵を次々と演じた。本人も、日活時代に階段から落ちたり橋から運河に飛び込んだりした経験から体を鍛え始め、30代以降の刑事物でも体を動かすのは苦にならなかったと語っている。太陽にほえろ!にもゲスト出演(1973年、三浦役)した。
ダンディーな中年俳優として[編集]
1980年代にはタバコのCMに出演し、ヒゲにサングラス、渋い声という「ダンディー」のイメージが定着した。映画では相米慎二監督の『ションベン・ライダー』(1983年、厳兵役)、角川映画『友よ、静かに瞑れ』(1985年)などに出演。音楽活動も続け、アルバム『イン・ザ・メロウ・ウィンド』(1982年)などを発表、1984年には写真集『WIND JOURNEY』『WIND DANCING』も出している。
なお、倉本聰脚本の『北の国から』の主人公・黒板五郎役の候補の一人だったが、最終的には田中邦衛が選ばれたという話が伝わっている。
若手監督との出会いと「村の写真集」[編集]
2000年代に入ると、藤は若い監督の作品に積極的に顔を出すようになる。黒沢清監督の『アカルイミライ』(2003年)では有田真一郎役を演じた。三原光尋監督の『村の写真集』(2004年製作、2005年公開)では、ダムに沈む村の頑固な写真館の主人・高橋研一を演じ、第8回上海国際映画祭で最優秀男優賞を獲得した。
この時期は大作にも出ており、『海猿 ウミザル』(2004年)、『力道山』(2006年)、『しあわせのかおり』(2008年、料理人役)、『はやぶさ 遥かなる帰還』(2012年)、『私の男』(2014年)など、ジャンルを問わない。テレビでは大河ドラマ『北条時宗』(2001年、佐志房役)、『長崎ぶらぶら節』(古賀十二郎役)なども演じた。2006年には個人事務所「藤竜也エージェンシー」を設立している。
『龍三と七人の子分たち』[編集]
2015年、北野武監督の『龍三と七人の子分たち』に主演した。元ヤクザの老人「龍三親分」が、昔の仲間を集めて若い詐欺集団に立ち向かうコメディで、70代のじいさんたちが大暴れする痛快作である。藤は最初に出演オファーを受けた際、「新手の詐欺じゃないか?」と疑ったと笑い話にしている。この作品で第25回東京スポーツ映画大賞の主演男優賞を受賞した。
同じ2015年にはNHK BSのドラマ『かぶき者 慶次』でも前田慶次役で主演し、エッセイ『現在進行形の男』(宝島社)も刊行。70代にして「現在進行形」を地で行く1年となった。
80代での主演作ラッシュ[編集]
2010年代後半から2020年代にかけても、藤の勢いは衰えない。河瀬直美監督の『光』(2017年)、『空母いぶき』(2019年、湧井継治役)、『台風家族』(2019年、鈴木一鉄役)、近浦啓監督の長編デビュー作『コンプリシティ/優しい共犯』(2020年、井上弘役)などに出演した。
2021年には連続テレビ小説『おかえりモネ』で、清原果耶演じるヒロインの祖父・龍己を演じ、宮城県気仙沼の牡蠣養殖業を営む穏やかな祖父像で幅広い世代に知られた。2023年には80代で初めて迎えた主演作『それいけ!ゲートボールさくら組』(織田桃次郎役、5月公開)、そして麻生久美子と父娘を演じた『高野豆腐店の春』(高野辰雄役、8月公開)と、主演映画が2本続けて公開された。
代表作の解説[編集]
『大いなる不在』(2024年)[編集]
近浦啓監督の長編第2作。俳優の卓(森山未來)のもとに、幼い頃に自分と母を捨てた父・陽二が警察に保護されたという連絡が入る。久々に会った父は認知症で別人のようになっており、再婚相手の義母・直美(原日出子)は行方不明。卓は遺された手紙やメモ、関係者の証言から、父の知られざる半生をたどっていく。監督自身の父が認知症を発症したことが企画のきっかけで、全編35ミリフィルムで撮影されている。
藤が演じる陽二は、高度な知性を持つ元大学教授でありながら認知症を患う人物で、論理的なセリフと、それを裏切る症状とを同時に演じ分ける難役だ。この演技で2023年の第71回サン・セバスティアン国際映画祭コンペティション部門のシルバー・シェル賞(最優秀主演俳優賞)を受賞。日本人として初の受賞と報じられた。2024年に日本で公開されると、TAMA映画賞最優秀男優賞、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞の助演男優賞なども受賞し、北米最大の日本映画祭「ジャパン・カッツ」からは特別生涯功労賞が贈られた。
インタビューでは「あんまり役作りはしませんね」と語り、毎日自分の老いと向き合っていること自体が役に通じていると説明している。森山とは初共演だったが、事前に役について話し合うことはなく、互いに構えるだけで芝居のやり取りができたという。原日出子とは『ションベン・ライダー』以来約40年ぶりの共演だった。海外での成功について問われると、監督や森山を大谷翔平になぞらえ、自分は「監督の才能に乗っかっているだけ」と謙遜してみせた。
『魯山人のかまど』(2026年)[編集]
2026年にはNHKの特集ドラマ『魯山人のかまど』(全4回、脚本・演出:中江裕司)で、食と美の巨人・北大路魯山人を演じた。NHK BSP4Kで3月6日から先行放送され、NHK総合では3月31日から毎週火曜22時に放送。取材に訪れる若い女性記者・田ノ上ヨネ子を古川琴音が演じ、吉田茂役で柄本明、最終回にはロックフェラー3世役でイギリスの俳優サイモン・ペッグが出演して話題となった。
同作は2025年7月に制作発表されたが、9月に制作延期が発表され、その後、当初主演に予定されていた小林薫から藤への主演交代が発表されたという経緯がある(理由はいずれも「諸般の事情」とされた)。放送では、藤がトレードマークのヒゲを全部剃り落とした姿で登場し、SNSでは「誰か全くわからんかった」「40年ぶりのヒゲそり、素敵!」と驚きの声が上がった。また、気難しい美食家の姿に『美味しんぼ』のファンから「リアル海原雄山だ」という声も出たと報じられている。『週刊文春』のコラムでは、84歳の藤の魯山人を「フェロモンたっぷり」と評している。陶芸が趣味の藤にとって、陶芸家でもあった魯山人はまさにハマり役だったといえる。
主な出演作[編集]
映画[編集]
| 公開年 | 作品名 | 役名 |
|---|---|---|
| 1962 | 望郷の海 | 清 |
| 1966 | 嵐を呼ぶ男 | 国分英次 |
| 1967 | 大巨獣ガッパ | ジョージ井上 |
| 1969 | 野獣を消せ | |
| 1970 | 女番長 野良猫ロック | 勝也 |
| 1970 | 野良猫ロック セックス・ハンター | バロン |
| 1971 | 野良猫ロック 暴走集団'71 | マッポ |
| 1971 | 不良少女 魔子 | 田辺 |
| 1974 | 任侠花一輪 | 白鳥真一 |
| 1976 | 愛のコリーダ | 吉蔵 |
| 1978 | 愛の亡霊 | 田中豊次 |
| 1983 | ションベン・ライダー | 厳兵 |
| 1985 | 友よ、静かに瞑れ | |
| 2003 | アカルイミライ | 有田真一郎 |
| 2005 | 村の写真集 | 高橋研一 |
| 2015 | 龍三と七人の子分たち | 龍三 |
| 2017 | 光 | 吉原重三 |
| 2019 | 空母いぶき | 湧井継治 |
| 2019 | 台風家族 | 鈴木一鉄 |
| 2020 | コンプリシティ/優しい共犯 | 井上弘 |
| 2023 | それいけ!ゲートボールさくら組 | 織田桃次郎 |
| 2023 | 高野豆腐店の春 | 高野辰雄 |
| 2024 | 大いなる不在 | 陽二 |
テレビドラマ[編集]
- 『太陽にほえろ!』(1973年、日本テレビ) - 三浦(ゲスト)
- 『時間ですよ』(1973年、TBS) - 風間
- 『寺内貫太郎一家』(1974年、TBS) - 上条
- 大河ドラマ『勝海舟』(1974年、NHK) - 土方歳三
- 『悪魔のようなあいつ』(1975年、TBS) - 野々村修二
- 『大追跡』(1978年、日本テレビ) - 水原慎介
- 『プロハンター』(1981年、日本テレビ) - 水原淳
- 『特命刑事ザ・コップ』(1985年) - 嵐京介
- 『ベイシティ刑事』(1987年) - 小池柾
- 大河ドラマ『北条時宗』(2001年、NHK) - 佐志房
- 『硫黄島〜戦場の郵便配達〜』 - 市丸利之助
- 『かぶき者 慶次』(2015年、NHK BS) - 前田慶次
- 連続テレビ小説『おかえりモネ』(2021年、NHK) - 永浦龍己
- 特集ドラマ『魯山人のかまど』(2026年、NHK) - 北大路魯山人
受賞歴[編集]
- 1976年 - 第1回報知映画賞 主演男優賞(『愛のコリーダ』)
- 2004年 - 第8回上海国際映画祭 最優秀男優賞(『村の写真集』)
- 2015年 - 第25回東京スポーツ映画大賞 主演男優賞(『龍三と七人の子分たち』)
- 2023年 - 第71回サン・セバスティアン国際映画祭 シルバー・シェル賞(最優秀主演俳優賞、『大いなる不在』)
- 2023年 - 第45回ヨコハマ映画祭 特別大賞
- 2024年 - 第33回日本映画プロフェッショナル大賞 特別功労賞(『高野豆腐店の春』)
- 2024年 - 第16回TAMA映画賞 最優秀男優賞(『大いなる不在』)
- 2024年 - 第37回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞 助演男優賞(『大いなる不在』)
- 2024年 - ジャパン・カッツ 特別生涯功労賞
60年以上のキャリアの中で、主要な国際映画祭の俳優賞を80代で手にしたという点が藤の受賞歴の最大の特徴だ。若手時代の賞よりも、むしろ晩年になるほど評価が高まっている珍しいタイプの俳優である。
家族[編集]
妻は日活の元女優・芦川いづみ。芦川は1950年代から60年代にかけて日活の清純派スターとして吉永小百合らと並ぶ人気を誇った女優で、二人は1968年に結婚した。当時の藤はまだ売り出し中の若手で、日活首脳陣は看板女優との結婚に反対したが、二人はそれを押し切って結ばれた。芦川は結婚を機に芸能界を引退し、以後は表舞台に出ていない。
藤は結婚当時を振り返り、「青二才」と言われないよう、俳優として妥協しない覚悟を持ったと語っている。80代のインタビューでは夫婦について「お互いがより大事になる」と話し、年を取ると妻の手のシワまで好きになるという趣旨の発言もしている。週刊誌では、毎晩寝る前にお休みの握手をする、外出時は手をつなぐといった関係者の証言も報じられた。同じ記事では息子がいることにも触れられている。
人物・エピソード[編集]
- 台本は捨てる、写真は残さない:撮影が終わると台本を破り捨て、若い頃の写真も手元に残していない。鏡も見ないという。過去に執着しないスタイルを徹底している。
- 「古い」は禁句:「古い」「年をとっている」という言葉は使いたくないと語る一方、「永遠よりも、終わりがあったほうがいいと思うな」とも述べており、老いを受け入れつつ前を向く独特の死生観を持つ。
- 脚本選びは厳しい:脚本を読む前には予備知識をリセットし、本気で取り組めるかを厳しく判断する。自分でも「酷薄なところがある」と認めている。
- 芝居は言葉より目と息:共演者と芝居について話し合うことはほとんどなく、目の動きや吐息で「無音のコミュニケーション」をとるのが流儀。
- 長く続ける秘訣:「縁と、運と、健康」。80代になってもウォーキング、公園での懸垂や腕立て伏せを日課にしていると報じられている。
- 理想の男性は裕次郎:生まれつきの明るさと、若手にも一人の人間として接するリスペクトを評価し、石原裕次郎を理想の男性像に挙げている。
- 下手も芸のうち:演技に上手い下手はなく、下手な演技も「芸のうち」と考えているという。
評価・影響[編集]
藤竜也のキャリアは、大きく三つの顔に分けられる。日活ニューアクションの危うい若者、『愛のコリーダ』の国際派、そして刑事ドラマやCMで築いた「ヒゲのダンディー」だ。普通ならどれか一つで語られて終わるところを、藤は2000年代以降に四つ目の顔、「若い監督に呼ばれる老優」を手に入れた。黒沢清、近浦啓、中江裕司といった作家性の強い監督が藤を起用し続けていることは、彼が単なるベテランではなく、今も新しい表現を引き出せる俳優と見なされている証拠である。
とくに『大いなる不在』の受賞は、海外の観客に「『愛のコリーダ』の俳優が半世紀後にここまで来た」と再発見させる出来事となった。北米ではジャパン・カッツで生涯功労賞が贈られ、ニューヨーク公開も決まるなど、国際的な評価は80代になってむしろ高まっている。
2020年代の動向[編集]
- 2021年:朝ドラ『おかえりモネ』に出演。同年、『愛のコリーダ』の2K修復版が『戦場のメリークリスマス』とともに国内でリバイバル上映された。
- 2023年:『それいけ!ゲートボールさくら組』『高野豆腐店の春』で主演。10月にサン・セバスティアン国際映画祭でシルバー・シェル賞を受賞。
- 2024年:『大いなる不在』が日本公開。国内の映画賞を多数受賞した。
- 2025年:相米慎二監督作品の4K特集の一環として『ションベン・ライダー』4Kレストア版が公開された。12月には大島渚の独立プロ時代の作品の世界初UHD化・国内初Blu-ray化が発表され、『愛のコリーダ』も注目を集めた。
- 2026年:NHK特集ドラマ『魯山人のかまど』で北大路魯山人を演じ、ヒゲを剃った姿が話題に。3月には映画.comのアクセスランキングで『愛のコリーダ』が前週235位から10位に急上昇した。5月には『おかえりモネ』放送開始5周年のスペシャルイベント開催が報じられた。
余談[編集]
- 好物は回転寿司で、毎週のように通っていると語られている。
- 趣味の陶芸は本格的で、横浜のデパートで陶芸展を開いたこともある。2026年に陶芸家でもある北大路魯山人を演じたのは、なかなか運命的な配役である。
- 1970年代には雑誌『話の特集』に「石垣島にて」「ストレンジャー・ブルース」「熱い砂のむこうに」などの小説を寄稿していた。俳優・歌手・写真集・小説と、実はかなりのマルチタレントである。
- 1967年には日活の怪獣映画『大巨獣ガッパ』にも出演している。ダンディー藤竜也と怪獣という組み合わせは意外性抜群だ。
- 『大いなる不在』では、劇中の主人公(森山未來)が「大河ドラマにも出演経験のある俳優」という設定になっている。
- 愛称は「ツモちゃん」。石原裕次郎からは「タツ」と呼ばれていた。
