悪人伝記
악인전기(アギンジョンギ)/Evilive
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主演のシン・ハギュン(2021年3月撮影。出典:Wikimedia Commons/dramax iHQ、CC BY)
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日本初放送時のキービジュアル(出典:衛星劇場 公式サイト)
ジャンル 犯罪、ノワール、スリラー
放送期間 2023年10月14日 - 2023年11月13日
放送時間 第1・2話:土・日曜 22:30/第3話以降:日・月曜 22:00(韓国時間)
話数 全10話(各約60分)
放送国家 韓国
言語 韓国語
放送局 ENA
配信 Genie TV(韓国・オリジナル)、Amazonプライム・ビデオ(日本)ほか
平均視聴率 約1.04%(最高1.661%・第4話、ニールセン・コリア全国有料世帯基準)
制作
企画 KTスタジオジニー
プロデューサー パク・ミンソル(製作総指揮)、パク・チョルス、キム・ミギョン、ユン・チャンウ
演出 キム・ジョンミン、キム・ソンミン
制作 フィルムモンスター
脚本 ソ・ヒ、イ・スンフン
音楽 ク・ジャワン
出演者 シン・ハギュン、キム・ヨングァン、シン・ジェハ、ソン・ヨンチャン、チュ・ジンモ、チェ・ビョンモ、チョ・ダルファン ほか
その他
原作 なし(オリジナル脚本)

概要[編集]

悪人伝記(あくにんでんき、原題:악인전기、英題:Evilive)とは、2023年10月14日から11月13日まで韓国のENAとGenie TVで放送・配信された全10話の韓国ドラマである。生活に追われる弁護士ハン・ドンス(シン・ハギュン)が、犯罪組織のナンバー2ソ・ドヨン(キム・ヨングァン)と出会い、「エリート悪人」へと堕ちていく過程を描いた犯罪ノワール。全話が19歳未満視聴不可に指定された。

詳細[編集]

「善人が悪人になる」逆転の物語[編集]

韓国の犯罪ドラマは「悪を裁く正義の主人公」か「改心する悪人」を描くことが多いが、本作はその逆を行く。主人公ハン・ドンスは最初こそ「守るべき一線がある」と口にする小市民的な弁護士だが、物語が進むにつれてその一線を一本ずつ踏み越え、最後には自分を闇に引きずり込んだ男と肩を並べる存在になっていく。公式のキャッチコピーは「一線を越えて悪人になる」。タイトルの「伝記」は、まさに一人の男が悪人として"完成"するまでの一代記であることを示している。

Genie TVオリジナル×ENA初の週末ドラマ[編集]

本作はKTグループの動画配信サービスGenie TVのオリジナルドラマとして企画され、同じKT系列のケーブルチャンネルENAでテレビ放送も行われた。ENAにとっては開局以来初となる週末ドラマ枠の作品で、初回放送の時間帯にはMBCの時代劇『恋人』やSBSの『7人の脱出』といった強力な地上波作品がぶつかっていた。企画はKTスタジオジニー、制作は今、私たちの学校は…(Netflix)を手がけたことで知られるフィルムモンスターが担当している。

前代未聞の「日・月」編成[編集]

放送開始当初は土・日曜の夜10時30分枠だったが、ENAは2023年10月18日、第3話から日・月曜の夜10時枠に移すと発表した。作品の競争力を高めるための措置とされ、韓国ドラマで「日・月」というイレギュラーな編成はほぼ前例がないとも言われた。この変更後、第4話で自己最高の全国1.661%を記録しており、結果的に一定の効果はあったと見られている。

全話「青少年観覧不可」[編集]

暴力描写や犯罪組織の描写が多いため、全10話すべてが19歳未満視聴不可(青少年観覧不可)の判定を受けた。演出のキム・ジョンミンは制作発表会で「ハン・ドンスという人物が悪人へ変わっていく過程を描くため」と説明しつつ、「犯罪を美化するドラマではない」と強調している。見どころとして挙げたのは派手なアクションよりも「ハン・ドンスとソ・ドヨンの心理戦」だった。

あらすじ[編集]

舞台は2008年、架空の港湾都市「シンナム(新南)」。小さな法律事務所を営む弁護士ハン・ドンスは、生計を立てるために刑務所にまで出向いて依頼人を探す、いわば"営業型"の弁護士。異母弟ハン・ボムジェが中古パソコン店で働きながら仕入れてくる「儲かりそうな事件」の情報が頼りという、ぎりぎりの暮らしを送っていた。

そんなある日、ドンスは出所を控えた犯罪組織「ユソン派」のナンバー2、ソ・ドヨンと出会い、ある依頼を引き受ける。金に困っていたドンスは「さっさと片付けて手を引く」つもりだったが、その依頼をきっかけに事件へ巻き込まれ、ドヨンが人を殺める現場まで目撃してしまう。最初は警察に通報しようとするものの、生き延びるために次第に犯罪の世界へ足を踏み入れていくことになる。

物語の中盤では、地元の大手法律事務所「ムン・ローファーム」との因縁が表面化する。ドンスの母がムン・ローファーム絡みの事件で命を落としたことで、ドンスの中に強烈な復讐心が芽生える。外見を変え、高級な暮らしを手に入れ、違法賭博サイトの運営にまで手を染めたドンスは、もはや「巻き込まれた被害者」ではなくなっていく。第8話では、ドヨンから「ムン・サングクを殺すか、自分が死ぬか」の選択を迫られ、ついに一線を越える。

結末(ネタバレ注意)[編集]

終盤、弟ボムジェがドヨンによって命を落とし、ドンスは一度は元の自分に戻るかのように見える。しかし物語はそこで終わらない。3年後、ドンスはかつてドヨンが所有していた会社と家を手に入れ、犯罪の中心に深く関わる人物になっていた。弟の死すら自分の権力のために利用したことが示され、血まみれの最終決戦を経て、ドンスはドヨンに対抗し得る「悪人」へと完全に進化する。ラストは、ひとり悪人の道を歩くハン・ドンスの姿で締めくくられる。勧善懲悪でも改心でもない、この後味の悪さこそが本作のタイトル回収になっている。

登場人物とキャスト[編集]

主要人物[編集]

  • ハン・ドンス(演:シン・ハギュン)
主人公。小さな法律事務所の弁護士。刑務所まで営業に回る"生活型弁護士"。根は善良だが野心と欲望も持ち合わせており、ソ・ドヨンとの出会いを機に悪へと変貌していく。シン・ハギュンは「既存の弁護士のイメージではなく、生きるために仕事を取らなければならない、本当に必死に生きる小市民」と説明している。劇中でよく口にしている飴は禁煙用キャンディという設定。
犯罪組織「ユソン派」のナンバー2。元野球選手という異色の経歴を持つ。後悔も反省もしない「絶対悪」で、ドンスの中の"悪のスイッチ"を押す人物。キム・ヨングァンは「ハン・ドンスがホワイトなら、ソ・ドヨンはブラック」「ハギュン先輩を悪の道に引きずり込む役」と表現した。
  • ハン・ボムジェ(演:シン・ジェハ)
ドンスの異母弟。中古パソコン店で働く傍ら、事件ブローカーとしてドンスに"儲かる事件"の情報を流す。兄が変わっていく姿を間近で見続ける、物語の良心的な存在。『模範タクシー』などで悪役の印象が強かったシン・ジェハは「今回は善い役。裏切りません」と語って会場を笑わせた。

ムン・ローファーム[編集]

  • ムン・サングク(演:ソン・ヨンチャン)
地元の有力法律事務所「ムン・ローファーム」の代表。ドンスにとっての因縁の相手。
  • ムン・ヘジュン(演:チェ・ビョンモ)
ムン・ローファームの後継者で、傲慢な弁護士。
  • イ・ソンギョ(演:チョ・ダルファン)
ムン・ローファームの事務長で、ドンスの友人。

その他[編集]

  • キム・ジェヨル(演:チュ・ジンモ)
海運会社「シンナム港運」の代表。
  • チョン・ヘヨン(演:チェ・ジョンイン)
ドンスの妻。
  • イ・ヘジャ(演:キル・ヘヨン)
ドンスの母。
  • ホ・ヤンホ(演:ムン・ジンスン)
ユソン派のナンバー3。
  • クォン・オジェ(演:ペ・ナラ)
ソ・ドヨンの部下。
  • パク・ジェイ(演:チェ・ユハ)
野心家で金に執着する酒場のマダム。
  • オ巡査(演:ファン・ジャヌン)、イ・スホ(演:チョ・ヒョヌ)、マ・チョルジン(演:クォン・ヒョク)
事件を追う刑事たち。
  • イ・ソク(演:イ・ガンジ)
ボムジェの友人。
  • ソン・ヨンハ(演:クァク・ジンソク)
キム・ジェヨルのボディガード。

※役名の日本語表記は放送局・配信サービスにより若干異なる場合がある。

制作[編集]

スタッフ[編集]

脚本はソ・ヒとイ・スンフンの共同、演出はキム・ジョンミンとキム・ソンミンの共同という、いずれも2人体制。製作総指揮はパク・ミンソル、プロデューサーにパク・チョルス、キム・ミギョン、ユン・チャンウが名を連ね、音楽はク・ジャワンが担当した。企画はKTスタジオジニー、制作はフィルムモンスター。韓国コンテンツ振興院の作品紹介では「韓国では珍しい犯罪ノワール」「映画並みのクオリティ」とアピールされている。

キャスティング[編集]

2023年8月、シン・ハギュン、キム・ヨングァン、シン・ジェハの出演が一斉に報じられた。シン・ハギュンはパク・チャヌク監督の映画『JSA』(2000年、ソン・ガンホらと共演)などで知られる演技派で、"演技の神"をもじった「ハギュン神」の愛称を持つベテラン。一方のキム・ヨングァンはモデル出身で、『ピノキオ』などの爽やかな役柄で人気を得てきた俳優で、本作は彼にとって本格的な悪役への挑戦として注目された。その後2025年にはNetflix『トリガー』で謎の武器ブローカー役を演じるなど、本作以降ダークな役柄の幅を広げている。演技派ベテランと人気若手俳優による「悪」の対決は、キャスト発表の段階から大きな注目を集めた。

撮影[編集]

撮影は2023年4月3日から9月11日まで行われ、主に慶尚北道の浦項(ポハン)でロケが行われたとされる。劇中の「シンナム」は架空の港湾都市で、港町の湿った空気感や工業地帯の風景が、ノワールらしい陰鬱な画面作りに一役買っている。

制作発表会[編集]

2023年10月13日、ソウル・麻浦区上岩洞のスタンフォードホテルで制作発表会が開かれ、シン・ハギュン、キム・ヨングァン、シン・ジェハ、キム・ジョンミン監督が出席した。キム・ヨングァンはシン・ハギュンを「ゾッとするハギュン(ソムットゥカギュン)」「演技マシーン」と呼び、シン・ジェハは序盤のコミカルな場面を引き合いに「キューティーハギュン」と持ち上げた。シン・ハギュンは「善悪というより、誰でも置かれた環境次第で変わり得るという点に集中した」と役作りを語っている。

視聴率[編集]

ニールセン・コリア調べ、全国有料世帯基準の視聴率は以下の通り(カッコ内は首都圏)。

話数 放送日 全国 首都圏
第1話 2023年10月14日 0.284% -
第2話 2023年10月15日 0.946% 1.226%
第3話 2023年10月22日 0.859% -
第4話 2023年10月23日 1.661% 1.884%
第5話 2023年10月29日 0.950% -
第6話 2023年10月30日 1.270% 1.311%
第7話 2023年11月5日 0.964% -
第8話 2023年11月6日 1.380% 1.406%
第9話 2023年11月12日 0.712% -
第10話 2023年11月13日 1.410% 1.505%

初回0.284%という低い数字から始まったが、最終回では初回の約5倍となる1.410%で幕を閉じた。平均は約1.04%。数字だけを見ると地味だが、ENAはケーブルチャンネルで、さらに本作は放送より先にGenie TVで先行配信される形式(Genie TVの上位プラン加入者は放送の9日前に2話ずつ先に視聴できた)だったため、テレビ視聴率だけでは人気を測りにくい作品でもある。なお、ENA最大のヒット作『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(最高17.5%台)や、のちの『優しい女プ・セミ』とは比較にならない規模であり、「知る人ぞ知る良作」という立ち位置に近い。

日本での放送・配信[編集]

テレビ放送[編集]

日本では、CS放送の衛星劇場が2024年9月13日から「日本初放送」として放送した(毎週金曜23時から2話連続)。その後、2026年7月6日からはCSのLaLa TVでノーカット字幕版が平日帯(月〜金曜)で放送された。

さらに韓流専門チャンネルのKNTVでも、2026年11月4日(水)から放送が始まる。放送枠は毎週水曜20時〜22時30分の2話連続で、再放送は毎週火曜11時30分〜14時(いずれも2話連続)。KNTVはスカパー!やケーブルテレビなどで視聴する有料の専門チャンネルである。

配信・ソフト[編集]

動画配信では、Amazonプライム・ビデオの見放題対象(全10話)となっているほか、Amazon内のチャンネルサービス「Channel K」「FOD Channel」でも配信されている(2026年時点)。配信状況は時期によって変わるため、視聴前に各サービスで確認するのが確実。

ソフトはDVD-BOXが2025年7月2日に発売された。韓国国内ではGenie TVのオリジナル作品のため、韓国外の大手グローバルOTTでの配信は当初ほとんどなく、海外ファンの間では「見たくても見られないドラマ」と言われた時期もあった(東南アジアでは有料チャンネルのKPlus、その後iQIYIなどで配信)。

評価[編集]

好意的な評価[編集]

韓国の視聴者・メディアの間では、勧善懲悪や悪人の改心といったお約束を裏切る構成が「新鮮」「これまでにない韓国ドラマ」と評価された。緊張感が途切れない展開と、10話というコンパクトな話数による没入感も好評。演技面では、小市民から怪物へと変わっていくシン・ハギュンの表情の変化と、キム・ヨングァンの冷たいカリスマ性が特に高く評価された。海外のドラマデータベースMyDramaListでも10点満点中8.1点(2026年時点)と、視聴率の低さとは裏腹に高めのスコアを維持している。

批判的な評価[編集]

一方で、終盤でソ・ドヨンがあっけなく崩れていく展開には「絶対悪にしては弱すぎる」という指摘がある。また、完全な悪人となったドンスの結末を「後味が悪い」と感じる視聴者もいた。頭の切れるドンスが、なぜそれまでムン・ローファームに一方的にやられっぱなしだったのか、説得力が弱いという意見も見られる。

同時期の「悪」ドラマ[編集]

2023年秋の韓国ドラマ界では、ディズニープラスの『最悪の悪』など、"悪"をタイトルや題材に掲げた犯罪ノワールが相次いだ。海外ファンの間では本作と比較して語られることも多く、「スターの悪役合戦」という点で一種のブームを形成していたとも言える。

余談[編集]

  • ハン・ドンスが劇中で頻繁に口にしている飴は、禁煙用のキャンディという設定。タバコを我慢している小市民ぶりと、その後の変貌との対比になっている。
  • ソ・ドヨンは元野球選手という設定で、組織のナンバー2でありながら元アスリートという異色の経歴が、モデル出身で長身のキム・ヨングァンの体格と重ねられている。
  • 制作のフィルムモンスターは、Netflixの世界的ヒット作『今、私たちの学校は…』の制作に関わった会社として知られる。
  • シン・ジェハは本作以前、『模範タクシー』などで"実は黒幕"系の役が続いていたため、制作発表会で「今回は裏切りません」と宣言したことが韓国メディアで見出しになった。
  • 韓国では2025年2月にもENAで再放送されている。ENAはその後も『かかし』など、ジャンル色の強い犯罪ドラマを送り出している。
  • 英題は「Evilive」(evil+live。アルファベットを逆から読んでも「evilive」になる回文になっている)。海外では「Biography of a Villain」「Villainous Lives」などの直訳タイトルで紹介されることもある。
  • 2019年の映画『悪人伝』と名前が似ているため、日本のレンタル店や配信サービスで取り違える人が少なくないという話がある。

外部リンク[編集]

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