| 川奈まり子 | |
|---|---|
| Mariko Kawana | |
| 生年月日 | 1967年11月9日 |
| 出身地 | 東京都世田谷区 |
| 活動期間 | 1999年 - 2004年(AV女優) |
| デビュー | 1999年 |
| ジャンル | 単体女優・人妻系 |
概要[編集]
川奈まり子(かわな まりこ、1967年11月9日 - )とは、日本の作家・コラムニストで、元AV女優。1999年に32歳でAVデビューし人妻・熟女路線で人気を得たのち2004年に引退、2011年に小説家デビューし、現在は実話怪談の書き手として知られる。2016年にはAV出演者の当事者団体「表現者ネットワーク(AVAN)」を設立し代表を務めた。
詳細[編集]
デザイナーからAV女優へ[編集]
東京都世田谷区出身。女子美術大学付属高等学校を経て、1988年に女子美術大学短期大学部グラフィックデザイン教室を卒業した。卒業後は出版社のデザイン室に勤務し、その後フリーライターとして活動している。
1999年、前夫との離婚を機に32歳でAVデビューした。同年夏の初主演作『義母〜まり子34歳〜』(溜池ゴロー監督、ソフト・オン・デマンド)は1万本を超えるヒットとなり、当時まだジャンルとして確立途上だった人妻・熟女ものの代表的な女優の一人となった。30代でデビューし、デビュー作から看板級の売上を記録したという点で、若手中心の単体女優市場では異例のケースだった。
本人は後年、AV現役時代(1999〜2004年)に出演強要の被害には遭わなかったと述べている。一方で、デビュー前にネット上で知り合った男性から出演を持ちかけられて脅されたことがあり、正規のプロダクションに登録してからはそうした脅しはなくなったとも語っている。この体験は、のちの当事者団体の活動にもつながっていく。
写真集と共著[編集]
現役期には写真集も複数刊行している。2001年4月『SATISFACTION』(英知出版)、2002年5月『欄熟35歳』(ぶんか社)、2003年5月『Final Eros』(双葉社)、2004年12月『SEXEVOLUTION』(英知出版)。2003年5月には『小説・エロスの告白』(双葉社)、2004年には加藤鷹との共著『鷹とまり子の大昇天』(徳間書店)も出しており、引退前からすでに「書く」仕事に手を伸ばしていた。
結婚と引退[編集]
2003年、AV監督の溜池ゴローと再婚した。デビュー作の監督と結婚したことになる。2004年3月にAV女優を引退し、同年11月に男児を出産。2015年には夫婦共著『溜池家の流儀』(双葉社)を刊行している。
小説家としての再出発[編集]
2008年から2011年にかけて「山村正夫記念小説講座」に通い、作家の森村誠一に師事した。2010年ごろから女性誌を中心にコラムや官能小説の執筆を始め、2011年に『義母の艶香』(双葉文庫)で小説家デビューした。デビュー作のタイトルがAV時代の出世作『義母』と響き合っているのは偶然ではないだろう。
その後しばらくは官能小説が中心で、『禁蜜 義母と叔母とぼく』(竹書房、2013年)、『熟蜜 義姉のしずく』(竹書房文庫、2015年)、『寝盗られ妻』(竹書房、2015年)などを刊行した。
実話怪談の書き手へ[編集]
2015年ごろから軸足は怪談へ移る。ニュースサイト「しらべぇ」で「川奈まり子の実話系怪談コラム」の連載を始め、同年には吉澤有貴との共著『怪談実話二人衆 嫐』(竹書房文庫)を刊行した。
2016年の『出没地帯 実話怪談』(河出書房新社)以降は単著の怪談本を量産するようになり、2017年には『迷家奇譚』(晶文社)、『実話怪談 穢死』『実話奇譚 呪情』(竹書房文庫)、『怪奇蒐集者 川奈まり子』(楽創舎)と年に4冊ペースで刊行。2018年『実話奇譚 夜葬』『実話奇譚 奈落』、2019年『一〇八怪談 夜叉』『実話奇譚 怨色』(竹書房怪談文庫)、2021年『東京をんな語り』(角川ホラー文庫)、2023年『家怪』(晶文社)と続いている。
連載も「TABLO」の「川奈まり子の奇譚蒐集」(2018年〜)、「TOCANA」の「情ノ奇譚」(2018年〜)と複数のウェブ媒体に広がった。2017年には週刊女性PRIMEが「事実に基づいた」怪談集の書き手として取り上げている。取材した体験談をもとに書く「実話怪談」は竹書房文庫を中心に一大ジャンルになっており、川奈はその中でも刊行点数の多い書き手の一人である。
2015年には、短編「赤い靴」(『赤い地獄』所収)を原作とする舞台『あかい、くつ。』(株式会社FPアドバンス主催)も上演された。
2020年代の活動[編集]
2020年代に入ってからも刊行ペースは落ちていない。2023年5月には講談社から『眠れなくなる怪談沼 実話四谷怪談』を刊行した。江戸三大幽霊の一人とされるお岩さまをテーマに、講談・落語・歌舞伎など時代ごとの『四谷怪談』の違いと、ゆかりの地での取材をもとにした実話怪談を組み合わせた一冊で、古典怪談の「元ネタ」を追う方向にも仕事を広げている。
2024年6月には笠間書院から『怪談屋怪談―怖い話を知り尽くした18人が語る舞台裏と実体験』を刊行。実話怪談・創作怪談・古典怪談の書き手、語り手、心霊映像の撮影者、占い師など、怪談に関わる18人に取材し、その道に入ったきっかけや業界の裏側、本人たちの実体験をまとめたインタビュー集である。怪談を「書く人」から、怪談業界そのものを「取材する人」へと立ち位置を一段引いた本といえる。
2026年7月2日には、ホラー作家の三津田信三が声をかけて実現した書き下ろし怪談小説アンソロジー『七人怪談 第二夜』(KADOKAWA)に、菊地秀行・澤村伊智・白井智之・立原透耶らとともに参加した。「自分が最も怖いと思う怪談」を各作家が書き下ろすという企画で、実話怪談の書き手としてだけでなく、ホラー小説の書き手としても声がかかる位置にいることがわかる。
YouTubeチャンネル「川奈怪談」[編集]
本人が語り手を務める公式YouTubeチャンネル「【川奈怪談】(作家・川奈まり子公式)」を運営している。既刊に収録した話を本人が朗読・語りで紹介する形式が中心で、たとえば2026年7月7日公開の「歌う女」は『一〇八怪談 飛縁魔』収録の一話を語ったものだった。怪談の世界では、本を出す書き手がイベントや配信で「語り手」も兼ねるのが一般的になっており、川奈もその流れに沿って活字と語りの両方で活動している。
表現者ネットワーク(AVAN)[編集]
2016年7月11日、AV出演者への支援と業界の健全化を目的とする一般社団法人表現者ネットワーク(AVAN)を設立し、代表に就任した。出演者自身による当事者団体としては業界初とされる。
2016年はAV出演強要問題が大きく報道された年で、業界は外部から規制強化を求められていた。AVANは「出演者本人の意思に反する出演強要は許されない」という立場をとりつつ、業界の外から一律に禁止するのではなく、出演者が安全かつ適法に働ける環境をつくる方向を打ち出した。具体的には知的財産振興協会(IPPA)などと協議し、プロダクションやメーカーではなく女優側に主導権がある統一契約書の作成を目指した。
報道ベースでは、2017年4月に出演強要の排除を目的とする第三者機関が発足し、同年10月の報告会で作品削除のルールなどが示され、12月には出演者が過去作品の削除を申し出られる新ルールの運用開始が報じられた(いずれも毎日新聞)。こうした「業界の自主規制」の枠組みづくりで、元出演者という立場から発言した人物として名前が挙がることが多い。
主な著書[編集]
| 年 | タイトル | 出版社 |
|---|---|---|
| 2003年 | 小説・エロスの告白 | 双葉社 |
| 2009年 | 三十路セックス | ベスト新書 |
| 2011年 | 義母の艶香 | 双葉文庫 |
| 2013年 | 禁蜜 義母と叔母とぼく | 竹書房 |
| 2015年 | 熟蜜 義姉のしずく | 竹書房文庫 |
| 2016年 | 出没地帯 実話怪談 | 河出書房新社 |
| 2017年 | 迷家奇譚 | 晶文社 |
| 2017年 | 実話怪談 穢死 | 竹書房文庫 |
| 2018年 | 実話奇譚 夜葬 | 竹書房文庫 |
| 2019年 | 一〇八怪談 夜叉 | 竹書房文庫 |
| 2021年 | 東京をんな語り | 角川ホラー文庫 |
| 2023年 | 眠れなくなる怪談沼 実話四谷怪談 | 講談社 |
| 2023年 | 家怪 | 晶文社 |
| 2024年 | 怪談屋怪談 | 笠間書院 |
| 2026年 | 七人怪談 第二夜(アンソロジー参加) | KADOKAWA |
余談[編集]
- グラフィックデザイン出身という経歴は、AV女優としても文筆家としても珍しい。
- デビューのきっかけが離婚、再婚相手がデビュー作の監督、小説デビュー作の題名が出世作と同じ「義母」と、キャリアの節目がきれいに円を描いている。
- 師事した森村誠一は『人間の証明』などで知られる推理作家で、官能小説から実話怪談へという転身ルートの出発点が本格ミステリーの講座だったというのも意外な取り合わせである。
- 『怪談屋怪談』では怪談業界の18人を取材しており、かつてAV業界の当事者として業界の内側を語ってきた経歴と、「業界の舞台裏を当事者に語らせる」という本の作りが似ているのは面白い符合である。
- 官能小説と実話怪談は、どちらも竹書房文庫が大きな受け皿になっているジャンルで、同じ版元の中でジャンルを移っていった形になる。