| 株式会社KUKI KUKI Inc. | |
|---|---|
| 略称 | 九鬼 |
| 国家 | 日本 |
| 種類 | 株式会社 |
| 業種 | アダルトビデオ |
| 本社所在地 | 東京都渋谷区恵比寿南 |
| 設立日 | 1977年4月 |
| 廃業日 | 2017年2月22日 |
| 設立者 | 中川徳章 |
| 代表者 | 中川徳章 |
| 従業員数 | 100名超(2004年・グループ合計) |
| 主要子会社 | 株式会社アルケミア(X CITY)、アスパイアビジョン株式会社、株式会社フォーム |
| 関係する人物 | 伊勢鱗太朗、蛭子能収、西野翔 |
| 代表作品 | 消し忘れビデオ、THE SEXライヴ |
| 別名 | KUKI |
概要[編集]
九鬼(くき、KUKI)とは、1977年に設立され、1983年からアダルトビデオの制作を手がけた日本の老舗アダルトビデオメーカーである。日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)系の大手の一つで、商用アダルトサイト「X CITY」の母体としても知られる。運営会社の株式会社KUKIは2017年2月に解散した。
詳細[編集]
九鬼は、自販機本・ビニ本の出版社として出発し、1983年にビデオメーカーへ業態転換した。ラブホテルの流出映像を編集した初リリース作で話題を集め、その後は女優の「本番」路線、伊勢鱗太朗による企画もの、単体女優レーベル群、企画系レーベル群と時代ごとに路線を変えながら、1980〜2000年代のアダルトビデオ市場で長く存在感を保った。
もう一つの顔がインターネット事業である。1995年という早い段階で自社サイトを開設し、のちに日本最大級のアダルトサイト「X CITY」へと育てた。1990年代後半にはアリスJAPAN・マックス・エーなどの老舗メーカーがX CITYを通じた販売で九鬼の周囲に集まり、一時は国内最大のアダルト系企業グループとされた。その座はのちにソフト・オン・デマンド系や北都系のグループに移っている。
沿革[編集]
1977年4月設立。オーナーの中川徳章をはじめ、社員には寺山修司率いる劇団・天井桟敷の出身者が多かったという。当初は自販機本最大手だったアリス出版の下請け編集プロダクションだったが、1978年頃から独自に出版を手がけ、「GAL/PRESS(ギャル出版)」の名で雑誌「Sister」を発行。やがて「九鬼(KUKI)」の名を前面に出してビニ本制作に乗り出し、グリーン企画(後の白夜書房)やハミング社(宇宙企画)と並ぶビニ本大手として知られるようになった。
1983年には出版業からビデオメーカーへ業態転換。「九鬼」としての初リリース(1983年6月)はラブホテルの流出映像を編集した『消し忘れビデオ』と『裏ビデオ通信』の2作で、ストーリーものが中心だった当時のAV市場で異彩を放ち大ヒットした。1984年8月には宇宙企画やVIPに続いて女優による「本番」路線へ踏み出した。
出版社時代(1977〜1982年)[編集]
自販機本の時代には「LANDA-S.S.」「LANDA-G.R.」などのブランドで雑誌やカセット・ブックを制作した。看板誌は「Sister」で、のちにビニ本へ軸足を移すと、グリーン企画・ハミング社・群雄社出版(のちのVIP)と並ぶ「ビニ本大手」の一角に数えられた。演劇畑の人材が編集に関わっていたことは、のちのビデオ作品の作風にも影響したとみられている。
AV参入と本番路線(1983〜1988年)[編集]
1983年の業態転換後、初期の九鬼は『プライベート・ビデオ・チャンネル』のような素人投稿映像の編集ものなど、「ドキュメント風」の作品で知られた。1984年8月からは『冬美の本番』『とも子の本番』『和子の本番』といった女優名を冠したシリーズを展開し、売れ行きは好調だった。1985年には中川えり子が『えり子の本番』でデビューし、初期の看板女優となった。
1980年代後半には伊勢鱗太朗が企画ものを手がけ、『風俗ギャル通信』などで注目された。漫画家の平口広美・蛭子能収、JAGATARAのOTO、俳優の田口トモロヲなど、AV業界の外にいる人物を出演者に起用したドラマ性の高い作品が多いのがこの時期の特徴である。映画監督・実相寺昭雄が監督した『アリエッタ』『ラ・ヴァルス』も九鬼から出ており、1989年の年間トップ作品になったとされる。のちに名を上げる豊田薫も、九鬼の『少女うさぎ 腰ひねり絶頂!?』で監督デビューしている。
「John See」シリーズ[編集]
1982〜1986年に日本で活動していたアメリカのパフォーマンス・アーティスト、ジョン・ダンカンは、中川徳章と組んで「John See」名義で脚本・監督・編集を担当したシリーズを制作した。ダンカンにとってはアダルトビデオの枠をどこまで広げられるかという実験で、九鬼側は投資を回収できなかった可能性があるものの、話題作りには成功したとされる。評価は二分され、アート作品として観た層は好意的、通常のアダルトビデオとして観た層は否定的だったという。
レーベル再編期(1989〜1999年)[編集]
1989年に伊勢鱗太朗がダイヤモンド映像へ移籍すると、九鬼は単体女優中心の路線へ舵を切った。単体向けにVINL(1989年)、SONIA(1991年)、Velvet Blue(1993年)などのレーベルを立ち上げたが、レーベル間の作風の差は小さく、最終的にVINLとTANK(1994年)に集約された。
1990年代前半の企画ものブームを受けて、1991年から企画ものの制作も始め、1994年に企画系レーベルDEVILを立ち上げた。1997年にはegg2とPRIVATE SEXを設立し、PRIVATE SEXの『THE SEXライヴ』シリーズは長寿シリーズとなった。1994年には藤原志保の名で桜瀬奈がデビューしている。
インターネット事業(1995年〜)[編集]
1995年春、九鬼は自社サイト「www.kuki.co.jp」を開設し、同年中に商用サイト「KUKI TOWER」、年末には有料会員サイトを稼働させた。約半年後にウェブ部門は株式会社アルケミアとして分社化され、サイトは1996年に「THE CITY」、のちに「X CITY」へと改称された。1997年10月にはストリーミング配信、2001年にはブロードバンド配信に対応し、英語版(1997年)・韓国語版(1998年)・中国語版(2002年)も設けられた。
X CITYは月額定額制で、複数メーカーの写真・動画クリップ・ストリーミング作品を提供したほか、女優・作品の発売日・共演者・監督・品番を引けるデータベースを備えていた。1998〜2004年には、九鬼系列メーカーの女優と作品を対象にファン投票で選ぶ「X CITY Grand Prix」も開催された。
2000年代以降と解散[編集]
2000年代に入ると、VINLは「綺麗」(2003年)に、企画系のegg2は「冒険ゴリラ」に引き継がれ、PRIVATE SEXとSUPER DEVILは終了した。代わりに「嵐」(2003年)や「toriko」(2005年)、「toriko blue」が始動した。九鬼はビデ倫加盟社だったため旧作には大きく粗いアナログ式モザイクがかかっていたが、2007年末からは細かいデジタルモザイクに差し替えた復刻版を「KUKIピンクファイル」シリーズとして発売した。
2008年と2009年にはAVグランプリにも作品を出品しており、2009年は葉山潤子主演の作品で参加した。DVDの復刻作品は2014年を最後にリリースが止まり、株式会社KUKIは2017年2月22日に解散した。その後も2019年に「KUKI2.0」が始動し、2020年にはX CITY限定でKUKIレーベル作品の配信が行われるなど、ブランドそのものはネット上で続いている。
業界での位置づけ[編集]
ビデ倫系の本格派メーカーとして、H.m.pや宇宙企画、桃太郎映像出版などと並んで1980〜90年代のAV黎明期を支えた。1990年代にはいち早く商用アダルトサイト「KUKI TOWER」を開設するなど、インターネット事業への進出でも先駆的だったらしい。
英語圏の資料では、九鬼の作風は「比較的ソフトな日本のポルノ」と紹介されている。一部に過激な題材の作品もあったが、主力は新人女優のデビュー作であり、「新人を世に出すメーカー」という性格が強かった。メーカー単体の売上よりも、X CITYという流通の場を握っていた点が九鬼の強みで、配信の時代を早い段階で先取りしていたといえる。
主なレーベル[編集]
| レーベル | 期間 | 主な性格 |
|---|---|---|
| KUKI / KUKI SPECIAL / 九鬼 | 1983年〜 | 本体レーベル |
| VINL | 1989〜2003年 | 単体女優 |
| SONIA | 1991〜1993年 | 単体女優 |
| Velvet Blue | 1993年 | 単体女優 |
| TANK | 1994年〜 | 単体女優 |
| DEVIL / SUPER DEVIL | 1994年〜 | 企画もの |
| egg2 / 冒険ゴリラ | 1997年〜 | 企画もの |
| PRIVATE SEX | 1997〜2003年 | 『THE SEXライヴ』シリーズ |
| 綺麗 | 2003年〜 | VINLの後継 |
| 嵐 | 2003年〜 | 企画もの |
| toriko / toriko blue | 2005年〜 | 単体・企画 |
| KUKIピンクファイル | 2007年〜 | 旧作のデジタルモザイク復刻 |
| KUKI2.0 | 2019年〜 | 配信向けの新ブランド |
関連会社[編集]
- 株式会社アルケミア:1995年9月設立。「X CITY」の運営のほか、ブラウザゲームやアプリの開発も手がけた。ハドソン・レッド・エンタテインメントと共同開発したブラウザゲーム『天外魔境 JIPANG7』は2011年4月に始まり、同年7月に終了した。2010年にはももいろクローバーZの楽曲を題材にしたiPhoneアプリ『momodule 01』を開発し、2020年6月からはライブ配信サービス「8181Live」を運営している。
- アスパイアビジョン株式会社:衛星放送事業を担当した。
- 株式会社フォーム:2000年から渋谷のクラブ(HARLEM、WOMBなど)の運営を担う。
- そのほか、アニメ制作のファイブウェイズ、映画制作のENGEL(1999年〜)、CS放送チャンネル「チェリーボム」などがグループに名を連ねた。
主な出身女優・監督[編集]
- 女優:中川えり子、森冬美、杉田とも子、香坂和子、高野みどり、希志真理子、水野愛、三浦あいか、早坂絵麻、苺みるく、大空あすか、西野翔、桜瀬奈、小西那奈、葉山潤子など
- 監督:伊勢鱗太朗、実相寺昭雄、豊田薫、田中勉、奥出哲雄、ジョニー渋谷など
余談[編集]
- 社員に天井桟敷の出身者が多かったため、初期の九鬼作品には演劇的な演出や、AVの外にいる表現者の起用が目立つ。
- 実相寺昭雄が監督した作品が1989年の年間トップ作品になったとされ、映画監督がアダルトビデオでヒットを出した例として語られることがある。
- 九鬼はビデ倫系のメーカーだったため、旧作のモザイクは大きく粗い。のちの「KUKIピンクファイル」は、同じ映像をモザイクだけ細かくして売り直すという、他社にはあまり例のない商品だった。
- アダルトメーカー系の子会社がももいろクローバーZのアプリや『天外魔境』のブラウザゲームを手がけていたという、業界の外から見ると意外な経歴を持つ。
- 渋谷の有名クラブ「WOMB」の運営会社が九鬼グループに属していたことは、あまり知られていない。